健康、長生き、アンチエージング

個人輸入の危険性

個人輸入の危険性 骸骨.gif



インターネット時代の世の中、世界中の商品を個人輸入代行を通じて取り寄せる事ができる。

便利になった反面、日本では禁止されているものも、自分が使う分には個人輸入ができ、手に入れることができる。

そこでは、薬事法や各種法律も規制の役には立たない。

かくいう私もリアップの5倍の濃度であるロゲインを個人輸入して手に入れて使用し、その効果を確認している。

これは、日本にもあるミノキシジルのリアップの5倍の濃度があり、コスト減に貢献するメリットがある。

同じ成分ということでこれはいいとしても、まったく日本では禁止されている成分を含んだものも個人輸入できる。

その中には、ひどいものもある。

先日知り合いからシルバーチェックなるものを薦められた。

数ヶ月で白髪が黒髪になるというのだが、何となくうさんくさい。

インターネットで調べてみると、まず頭にきたのは、その人の提示する値段の半額以下で売っている業者が他にあるという事である。

まずはそこで購入の意思はなくなったが、もっとひどい事が分った。

消費者が、独立行政法人である国民生活センターにその安全性確認を依頼したレポートがヒットした。

詳しくは下記に添付するのでそれを参照していただきたいが、まず驚いたのは、その成分に日本では禁止されている酢酸鉛が含まれていることである。

何のことはない劇物の重金属の鉛が蓄積して、頭皮のタンパク質と結合して黒い色を出しているのである。

水銀の水俣病、カドミウムのイタイイタイ病など重金属の人体への蓄積は恐ろしいものがあることは衆知の事実である。

重金属の最も恐ろしいのは、半減期が永く、蓄積して人間の寿命100年くらいの間では代謝排泄されないということである。

多分その知人もそこまで考えないで販売しているのだとは思うが、危険な事である。

何も知らない消費者が、何も知らないセールスから購入して使用し、重金属障害で取り返しのつかない後遺症に悩む事になる。

くれぐれも体内に摂取するものは慎重に選択をしたいものである。

*********************************************************************

記者説明会資料
平成17年10月6日
独立行政法人 国民生活センター
酢酸鉛配合の白髪染めクリーム等の安全性
1.目的
「個人輸入した白髪染めができるというヘアクリームの成分に酢酸鉛と表示されている。鉛の含有量を調べて欲しい」という原因究明テストの依頼があり、テストを実施することにした。
国民生活センターのPIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)にも、酢酸鉛配合の白髪染めクリーム等の安全性に関する相談が複数寄せられており、「使用したら赤い発疹が出た」、「かゆみが生じた」等の危害事例もみられた。
酢酸鉛は、神経系の障害、腎機能障害、生殖機能障害など人体へのさまざまな悪影響が報告されている物質であることから、皮膚に直接付着する可能性がある白髪染めクリーム等の成分として使用される場合、安全性に問題があるのではないかと考えられる。
そこで、酢酸鉛の成分表示があり、白髪染め効果をうたった商品が他にも販売されているか調べたところ、いくつかの商品がインターネットなどで販売されていることが分かった。
一般に、毛髪に色をつけるクリーム等には、髪を物理的に染色するものと染毛過程で化学反応を伴うものがあり、薬事法上、前者は染毛料として化粧品に、後者は染毛剤として医薬部外品に分類される。しかし、酢酸鉛は医薬品の成分であり化粧品に配合することは認められておらず、又、酢酸鉛を含む白髪染めクリーム等は医薬部外品としての個別の承認を受けていないため、現状ではこのような商品が化粧品若しくは医薬部外品として国内で流通することはあり得ない。
そこで、個人輸入品に該当すると思われるものも含めて、国内で購入可能な酢酸鉛の成分表示がある白髪染めクリーム等について、酢酸鉛の分析を行い消費者へ情報提供することとした。
2.テスト実施期間
検体購入 : 2005年6月
テスト期間 : 2005年6月~8月

3.テスト対象銘柄
テスト依頼があった銘柄(No.1)と、成分表示に酢酸鉛が記載されており、「使用することによって徐々に白髪を元の髪色に仕上げる」等の染毛効果をうたっているクリーム状及びリキッド状の白髪染め4銘柄の合計5銘柄をテスト対象とした(表1参照)。テスト対象銘柄は全て外国製だが、国内で購入可能な商品であった。No.1を除く4銘柄は輸入代行業者等が開設しているインターネットの日本語サイトを通じて購入することができたが、海外から直接発送されたものと国内から発送されたものがあった。
表1.テスト対象銘柄一覧 *1
No. 商品の性状 銘柄名 製造元 生産国 内容成分 酢酸鉛表示量(mg / g)

内容量 購入価格(税込)

1
シルバーチェックヘアクリーム*2
Silvercheck Pty Ltd
オーストラリア
水、グリセリン、セテアリルアルコール、硫黄、塩化アンモニウム、酢酸鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、セテアリル硫酸ナトリウム、香料、安息香酸デナトニウム
表示なし
160 ml 28,800 円(6本セット)

2
silver checkHair Cream
Silvercheck Pty. Ltd.Australia
Water(Aqua)、Glycerin、Cetearyl
Alcohol、Sulfur、Ammonium Chloride、Lead Acetate*3、Sodium Lauryl Sulfate、Sodium Cetearyl Sulfate、Fragrance(Parfum)、Denatonium Benzoate
5
150 ml 3,500 円

3
Restoria Discreet Colour Restoring Cream
The Ward Group Pty. Ltd. Australia
Water(Aqua)、Glycerin、Cetearyl Alcohol、Sulfur、Ammonium Chloride、Lead Acetate*3、Sodium Lauryl Sulfate、Sodium Cetearyl Sulfate、Fragrance(Parfum)、Denatonium Benzoate
5
150 ml 2,620 円

4
クリーム ユースヘアー クリーム
A.I.I.-Clubman アメリカ
水、グリセリン、乳脂肪、流パラ、ラノリン、硫黄、セトステアリルアルコール、酢酸鉛、香料、ステアレス20、メチルパラベン、プロピルパラベン
表示なし
8オンス(約240ml)2,800 円

5
リキッド
ユースヘアー リキッド
A.I.I.-Clubman アメリカ
水、グリセリン、乳脂肪、流パラ、ラノリン、硫黄、セトステアリルアルコール、酢酸鉛、香料、ステアレス20、メチルパラベン、プロピルパラベン
表示なし
8オンス(約240ml)2,800 円

※ このテスト結果はテストのために購入した商品のみに関するものである。
*1: 国内で購入することができる酢酸鉛を成分表示した白髪染めクリーム等はテスト対象銘柄が全てではないが、当センターで入手できた商品は最初にテスト依頼のあったNo.1を除く4銘柄である。テスト対象とした商品本体に表示されていた内容を表1に示した。
*2: 最初にテスト依頼があり、相談者から入手した商品。当センターで同一の商品を購入することができなかったため、同一と思われる商品を再度購入したところ、本体の表示が英語表記に変わっていた(2005年6月現在)。
*3: Lead Acetateは酢酸鉛の英語名である。

4.テスト結果
1)分析
テスト対象銘柄に表示通り酢酸鉛が含まれているか調べた。ただし、酢酸鉛そのものを分析することができなかったため、酢酸が含まれているかを酢酸塩の定性試験で確認し、更に鉛の含有量を測定した。

(1)全ての銘柄に酢酸塩が含まれていた
日本薬局方収載の酢酸塩定性法により酢酸塩の定性を行った。その結果(表2参照)、全ての銘柄に酢酸塩が含まれていることが確認された。
表2.酢酸塩定性試験結果
銘柄(No.)1 2 3 4 5
1. 沈殿の有無*4
(有:+、無:-)
+++++
2. 沈殿の溶解*4
(溶解:+、溶解せず:-)
+++++
*4: 酢酸塩が存在すると、1.沈殿が有(+)、2.沈殿の溶解は(+)となる。

(2)全ての銘柄に鉛が含まれており、鉛含有量は0.27~0.43 %であった
テスト対象銘柄に含まれている鉛量の測定を行った。
測定結果を表3に示す。テスト対象銘柄全てに鉛が含まれていた。前項で全銘柄に酢酸塩が含まれることが確認されていることから、テスト対象銘柄は全て酢酸鉛を含有する商品であると考えられた。
テスト対象5銘柄の鉛含有量は0.27~0.43 %であった。又、鉛含有量から計算した酢酸鉛含有量は0.49~0.79 %であった。No.2、3は酢酸鉛を0.5 %*5含有するとの表示があったが、これらはいずれも本結果から算出した酢酸鉛含有量と近い値だった。
*5: 表示では5 mg/gと記載されていた。

表3.鉛含有量測定結果及び酢酸鉛含有量計算値
銘柄(No.) 鉛含有量(%)酢酸鉛含有量(計算値*6、%)
1 0.29 0.53
2 0.29 0.53
3 0.27 0.49
4 0.43 0.79
5 0.40 0.73
*6: 商品に含まれる鉛が全て酢酸鉛三水和物(FDA(米国食品医薬品局)が頭髪着色料化粧品への配合を認めており、テスト銘柄のような白髪染めクリーム等に使われていると考えられる物質)由来だと仮定した時の酢酸鉛含有量の計算値

2)表示について
本体、外箱及び付属の取扱説明書に記載されていた日本語の表示を調べた。テスト対象銘柄は発送元が海外の商品と国内の商品があったが、本体及び外箱に日本語表示がない銘柄も、日本語で記載された取扱説明書が同封されており、全ての銘柄に何らかの日本語表示があった。

(1)全銘柄とも、使用すると徐々に白髪が黒く染まるなどの染毛効果に関する表示があった
テスト対象銘柄に日本語で記載されていた染毛効果に関する主な表示を表4に示す。
5銘柄とも、「白髪を黄味がかった茶色にし、それから薄い茶色、濃い茶色、黒へと徐々に色を濃くしていきます」、「徐々に白髪が減っていきいつのまにか黒い髪に変わっていきます」など、使用することで徐々に髪の毛が黒くなるという旨の染毛効果に関する表示がみられた。しかし、全銘柄に「白髪染めではありません」、「染毛剤ではありません」などの記載があり、商品分類が分かりにくい表示だった。

表4.染毛効果に関する表示(抜粋)
銘柄(No.) 染毛効果に関する表示
1
・ 白髪を少しずつ自然な髪色に仕上げ長持ちさせます
・ 白髪は徐々にできるものですが、シルバーチェックはこれと同様に少しずつ白髪を解消していきます。まず白髪を黄味がかった茶色にし、それから薄い茶色、濃い茶色、黒へと徐々に色を濃くしていきます。
・ シルバーチェックヘアクリームは染毛剤ではありません。その有効成分が毛髪の成分に作用し、白髪を徐々に自然な髪色にしていくものです。

2
・ 白髪を少しずつ自然な髪色に仕上げ長持ちさせます
・ 白髪は徐々にできるものですが、シルバーチェックはこれと同様に少しずつ白髪を解消していきます。まず白髪を黄味がかった茶色にし、そこから薄い茶色、濃い茶色、黒へと徐々に色を濃くしていきます。
・ シルバーチェックは染色剤ではありません。

3
・ レストリア・ディスクリート・ヘアクリーム&ローションは、白髪を徐々に目立たず元の色に再生します。本製品は白髪染めではありません。
・ 白髪とは単なる色素欠乏状態です。レストリア・ディスクリートには、毛皮質の色素欠乏を打ち消す効果があります。髪の自然な化学物質に働きかけ、自然な髪の色を再生します。2~3週間毎日ご使用いただければ、さりげなく少しずつ白髪を着色していきます。

4
・ ユースヘアーは髪の蛋白質と結合する色素メラニンを補充し2~3週間で自分の自然な髪の色を取り戻します(効果には個人差があります)。
・ ユースヘアーはヘアーカラーのように突然違う髪になるのではありません。お使いいただくうちに徐々に白髪が減っていきいつのまにか黒い髪に変わっていきます。
・ ユースヘアーは、白髪染めではありません。

5
・ ユースヘアーは髪の蛋白質と結合する色素メラニンを補充し2~3週間で自分の自然な髪の色を取り戻します(効果には個人差があります)。
・ ユースヘアーはヘアーカラーのように突然違う髪になるのではありません。お使いいただくうちに徐々に白髪が減っていきいつのまにか黒い髪に変わっていきます。
・ ユースヘアーは、白髪染めではありません。

(2)どの銘柄も、使用の際、地肌(手、指、頭皮)に直接商品が付着し、長期間残留するような使用方法が記載されていた
テスト対象銘柄に日本語で記載されていた使用方法に関する表示を表5に示す。又、FDA(米国食品医薬品局)で規定している表示すべき注意事項*7を参考に、テスト対象銘柄に注意表示がなされているかを調べた(表6参照)。
その結果、どの銘柄も使用の際に手や指に直接商品が付着するような使用方法が記載されていたが、No.3には「使用後に手(爪)を洗ってください」等の日本語の注意表示がなかった。他の注意表示の調査項目についても、No.3は日本語の表示がなく、分かりにくかった。
又、「マッサージするように髪と地肌にすりつけてください」、「白髪部分にマッサージするようにすりこみます」のように、頭皮にも直接商品が付着するような使用方法が記載されている銘柄が多かった。どの銘柄も使用開始から2~3週間は毎日使用するとの記載があり、「使用後は洗い流さない」、「洗髪の回数を減らす」という表示もあることから、頭皮に商品が長時間残留する状態になると考えられた。
*7: 酢酸鉛含有頭髪着色用化粧品への記載事項としてFDAが規定した項目は以下の通り。
・酢酸鉛を含む
・外用に限る
・子供の手の届かない所に置くこと
・切り傷やすり傷のある頭皮に使用しないこと
・皮膚刺激が起きた場合には、使用をやめること
・口ひげ、まつ毛、眉毛、若しくは頭皮以外の身体部分上の毛の着色に使用しないこと
・目に入らないようにすること
・使用説明をよく守り、使用後は手をよく洗うこと

表5.使用方法に関する表示(抜粋)
銘柄(No.) 使用方法に関する表示
1
・ 指にシルバーチェックを適量とり、手のひらで白くなるまですり合わせ、白髪のある場所に塗ります。
・ シルバーチェックは洗い流さないでください。
・ シルバーチェックは毎日お使いください。特に生えぎわ周辺は頻繁に使用してください。
・ 通常は2~3週間程で白髪がお好みの色になります。その時点でシルバーチェックの使用頻度を下げ(週2~3回程度)、同じ色を維持します。
・ 本製品使用後は、手をよく洗ってください。

2
・ 指にシルバーチェックをとり、白髪のある場所にマッサージするようにすり込みます。
・ シルバーチェックは洗い流さないでください。
・ シルバーチェックは毎日髪につけます。シャンプーは週2~3回程度、余剰分が髪に蓄積しない程度に行なってください。
・ 通常は2~3週間で白髪がお好みの色になりますから、その時点でシルバーチェックの使用頻度を下げ、同じ色を維持します(週1~2回程度)。シルバーチェックは、こめかみ周辺に最も頻繁に使用してください。
・ 本製品使用後は、爪をよく洗ってください。

3
・ 本製品を白髪部分に指先でマッサージするようにすり込みます。
・ 本製品は毛皮質に付着し、髪の自然な化学成分に働きかけて色を再生するため、クリームやローションを洗い流すことは避けてください。
・ 最初の2~3週間は毎日使用し、髪は2~3日ごとにシャンプーしてください。
・ 髪がご希望の色に戻ったら、製品の使用頻度を週1~2回に減らして色を維持します。

4
・ 少量を手に取り、マッサージするように髪と地肌にすりつけてください。
・ シャンプーは週2・3回程度にしてください。
・ 最初の2~3週間は、毎日ユースヘアーをお使い下さい。
・ なお、いったん自然な髪の色を回復した場合は、その色を維持するため週に1-2回程度ご使用下さい。
・ ご使用の後は手を徹底的に洗ってください。

5
・ 少量を手に取り、マッサージするように髪と地肌にすりつけてください。
・ シャンプーは週2・3回程度にしてください
・ 最初の2~3週間は、毎日ユースヘアーをお使い下さい。
・ なお、いったん自然な髪の色を回復した場合は、その色を維持するため週に1-2回程度ご使用下さい。
・ ご使用の後は手を徹底的に洗ってください。

表6.日本語による注意表示等の有無
銘柄(No.) 1 2 3 4 5
注意表示

子供の手の届かないところに置く
有 有 無*8 有 有
切り傷・擦り傷のある頭皮に使用しない
有 有 無*8 有 有
頭髪以外の毛の着色に使用しない
有 有 無 有 有
使用後は手をよく洗う
有 有 無*8 有 有
(爪を洗う)
*8: 英語表示があった項目

5.化粧品及び医薬部外品の個人輸入について
化粧品及び医薬部外品を営業目的で輸入し、販売・譲渡する場合は、薬事法によって厚生労働大臣又は都道府県知事の許可が必要である。個人が自分で使用するために輸入する場合又は海外から持ち帰る場合(個人輸入)は厚生労働大臣等の許可は必要ないが、輸入できる数量が制限(化粧品1品目24個以内、医薬部外品2ヶ月分以内)されている。この場合、他人への販売及び授与はできない*9。
化粧品及び医薬部外品を個人輸入するには以下の3つのパターンがある。
1. 消費者自らが外国に出かけ、現地で購入し、国内に持ち込む。
2. 消費者自らが外国の業者に注文し、外国の業者から直接商品の発送を受ける。
3. 消費者は国内の輸入代行業者に希望する商品の輸入を依頼し、商品代金に輸入代行業者の手数料を上乗せした金額を支払う。輸入代行業者*10は、預かった代金等をとりまとめ、送付先等リスト(輸入者(消費者)の氏名、現住所等)とともに、外国の販売業者に送付する。外国の販売業者は、輸入者(消費者)に対し、直接商品を送付する。
日本国内で販売されている化粧品や医薬部外品は、日本の薬事法に基づいて有効性や安全性が確認されている。しかし、個人輸入したものについては薬事法の規制を受けないため安全性が確保されていないので、使用したことによって何らかの被害が起きたとしても個人の責任で対処しなければならない。
*9: 参考「医薬品や化粧品などの個人輸入について(平成16年4月1日 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課)」
*10: 輸入代行業と称している場合であっても、外国の業者から化粧品等を輸入し、顧客に販売する行為を行うなど実態として輸入行為を行っている場合は、製造販売届及び輸入届又は外国製造業認定の届が必要である。

6.酢酸鉛に関する規制、及び安全性に関する情報
1)規制
(1)日本での規制
日本国内において、酢酸鉛は局所収れん薬(湿布剤)として医療用医薬品に用いられる医薬品成分であることから、薬事法に基づいて定められた化粧品基準の中で化粧品に配合してはならない成分として記載されている「医薬品の成分(添加物としてのみ使用される成分を除く。)」に該当する(参考資料1、2参照)。そのため、酢酸鉛を化粧品に配合する場合は、「化粧品への配合を希望する医薬品の成分の取扱いについて(依頼)、(平成16年3月25日付薬食審査発第0325019号)」に従った関係書類を厚生労働大臣に提出し、化粧品基準の改正を要請しなければならない。
一方、酢酸鉛を含む白髪染めクリーム等が医薬部外品(染毛剤)に該当する場合、薬事法の規定により商品ごとに品質、有効性、安全性の審査を受けて承認を得る必要がある。又、業として医薬部外品を輸入販売する場合は、医薬部外品製造販売業の許可を得なければならない。
テスト対象銘柄は薬事法で化粧品への使用を禁止された酢酸鉛が配合されており、医薬部外品としての承認も得ていないため、化粧品としても医薬部外品としても薬事法に抵触する商品であると言える。つまり、現状ではこのような商品が化粧品若しくは医薬部外品として国内で流通することはあり得ない。
又、酢酸鉛は劇物に指定されており、「毒物及び劇物取締法」に基づいて製造、販売等に基準が設けられ、貯蔵方法等の取扱いも規制されている。

(2)諸外国での規制
オーストラリアでは、酢酸鉛が配合された染毛商品は化粧品に分類される。酢酸鉛はAICS(オーストラリア化学物質目録)*11に掲載されており、化粧品への使用が認められている成分であるが、商品に表示すべき事項が規定されている。
アメリカでは、FDAが酢酸鉛の化粧品への添加を頭髪着色用化粧品に限り認めている。その場合の酢酸鉛含有量は鉛含有量として0.6 %(対容量重量比)が上限とされており、商品に表示すべき注意事項についても規定されている(CFR*12, Title21)。
EU(欧州連合)では、酢酸鉛は危険な物質の分類、包装、表示に関する理事会指令(Council Directive 67/548/EEC)に基づいて生殖毒性物質のカテゴリー1*13に分類され、化粧品成分としての使用が禁止されている(Directive 2003/15/EC of the european parliament and of the council)。
*11: AICSはオーストラリア国内で使用することのできる化学品のデータリストであり、政府機関であるNICNAS(National Industrial Chemicals Notification and Assessment Scheme)の下で管理・運営されている。
*12: CFR(Code of Federal Regulations)は、米国連邦政府の行政命令などを告示する政府刊行物であり、米国食品医薬品局規制情報はCFRのTitle21に分類されている。
*13: EUでは、ヒトに対する生殖、発生毒性について毒性の高いものからカテゴリー1~3の3段階に分類している。カテゴリー1はヒトの生殖、発生毒性と当該物質への暴露との因果関係を確立し得る十分な証拠があると認められた物質が分類される。

2)安全性
無機鉛化合物(酢酸鉛を含む)の体内への吸収経路は吸入又は経口いずれかの暴露経路が主であり、傷のない皮膚からの吸収は少ないと言われている(EHC*14 165, 1995)。しかし、酢酸鉛を含む無機鉛化合物のヒトへの影響については、神経系の障害、腎機能障害、生殖機能障害などさまざまな報告がある((財)化学物質評価研究機構 化学物質安全性評価シート、参考資料3)。又、国際化学物質安全性カード*15によると、酢酸鉛の皮膚への暴露によって発赤、痛みを生じるとされている。
一方、WHO(世界保健機構)の付属機関であるIARC(国際がん研究機関)は、酢酸鉛を含む無機鉛化合物の発がん性リスクを「ヒトに対して恐らく発がん性がある」とするグループ2A*16に分類している。
EUでは、酢酸鉛はヒトへの暴露と受胎能力障害及び発生毒性との因果関係を確立する十分な証拠があるとして生殖毒性物質のカテゴリー1にクラス分けされ、そのうち、ヒトに対して発生毒性を引き起こすことが知られている物質*17に分類されている。
日本で酢酸鉛は1~2%の水溶液として医療用医薬品の外用収れん剤(湿布剤)に用いられているが、添付文書中の使用上の注意には「大量に吸収された場合には、鉛中毒を起こすことが報告されているので、長期・大量使用は避けること」と記載されている。
無機鉛化合物を含有する化粧品としては、ヒドロオキシ炭酸鉛(鉛白)を含む鉛おしろいが日本でも16世紀末頃から広く使われていたが、慢性鉛中毒が問題となり、当時の内務省が明治33年及び昭和5年に発令した省令によって化粧品としての使用が禁止されたという経緯がある*18。
*14: WHO等が参加しているIPCS(国際化学物質安全性計画)は、化学物質ごとのヒトや環境に対する影響などについて総合的に評価しEHC(環境保健クライテリア)を作成している。化学物質の安全性を評価する事業として国際的に高い評価を受けており、日本でも各種基準・規制値などの参考にされている。
(無機鉛化合物の経皮吸収に関する参考文献:Moore, M.R. et al., Fd Cosmet. Toxicol. 1980, 18, 399-405)
*15: ICSC(国際化学物質安全性カード)はIPCSの事業の一つで、労働者や雇用者が使用する化学物質の健康や安全に関する重要な情報を簡潔にまとめた文書である。
*16: IARCはヒト発がん性を発がん強度の高いものから1、2A、2B、3、4の5段階に分類している。酢酸鉛を含む無機鉛化合物は動物実験で発がん性を示す十分な根拠が得られたとして2004年の評価でグループ2Aに分類された。(IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans 2004, 87, 10-17)
*17: EUの生殖毒性カテゴリー1には「ヒトの生殖能力を害することが知られている物質(R60)」及び「ヒトに対して発生毒性を引き起こすことが知られている物質(R61)」が分類されており、酢酸鉛はR61に分類されている。
*18: 参考「化粧品化学ガイドブック(日本化粧品技術者会)」

7.消費者へのアドバイス
1)酢酸鉛は、人体へのさまざまな影響が報告されていることから、成分表示に酢酸鉛が記載されている白髪染めクリーム等は購入しないほうがよい
今回テストを実施した酢酸鉛配合の白髪染めクリーム等は使用目的、効果等から化粧品若しくは医薬部外品と同様に使用されるものと考えられるが、酢酸鉛は化粧品成分としての使用は認められておらず、医薬部外品としての承認を受けた商品もない。したがって、酢酸鉛を含む白髪染めクリーム等は、現状では化粧品若しくは医薬部外品として国内で流通することはあり得ない。
一方、酢酸鉛は化学物質としても人体へのさまざまな影響が指摘されており、酢酸鉛を含有するこれらの商品は安全性に問題があると考えられる。今回のテスト対象銘柄はインターネット等で容易に購入できた商品であるが、「酢酸鉛」若しくは「Lead Acetate」と表示のある白髪染めクリーム等は購入しないほうがよい。
2)個人輸入を利用する際は十分な注意が必要である
日本国内で販売されている化粧品及び医薬部外品は、薬事法に基づいて有効性や安全性が確保されているが、個人輸入したものについては薬事法の規制を受けていないため安全性が確保されていない。したがって、使用したことによって何らかの被害が起きたとしても個人の責任で対応することになるので注意が必要である。

8.行政への要望
薬事法に抵触する商品もあると考えられるため、監視、指導の徹底を要望する
酢酸鉛を配合した外国製の白髪染めクリーム等を、インターネット等を通じて国内で購入することが可能である。これらの商品は、使用目的、効果等から化粧品若しくは医薬部外品と同様に使用されるものと考えられるが、酢酸鉛は化粧品成分としての使用は認められておらず、医薬部外品としての承認を受けた商品もない。したがって、このような商品の中には、販売方法等にもよるが薬事法に抵触するものもあると考えられる。又、酢酸鉛は、人体に対するさまざまな影響も報告されている物質であり、安全性にも問題があると考えられるため、監視、指導の徹底を要望する。

9.テスト方法
1)分析
(1)酢酸塩の定性
日本薬局方収載の酢酸塩定性法*19に基づき、酢酸塩の定性を行った。
試料に1規定塩化第二鉄水溶液を加える。酢酸塩が存在すると、液は赤褐色を呈し、これを煮沸すると、加水分解して塩基性塩の赤褐色沈殿を生じる。更に塩酸を加えると沈殿は溶け、液は黄色を呈する。沈殿の有無及び塩酸の添加による沈殿の溶解を観察し、酢酸塩の含有を確認した。
*19: 酢酸塩定性法(日本薬局方より抜粋)
酢酸塩の中性溶液に塩化鉄(3)試液を加えるとき、液は赤褐色を呈し、煮沸するとき、赤褐色の沈殿を生じる。これに塩酸を追加するとき、沈殿は溶け、液の色は黄色に変わる。
(2)鉛含有量の測定
試料約1 gを採取し、乾式灰化法で有機物を完全に灰化した。灰化した試料の鉛含有量をICP発光分析法により測定した。ICP分析条件は以下の通りである。
<測定条件>
機種:高周波プラズマ発光分析装置ICPS-7510
測光方法:逐次元素測光方式(シーケンシャルモード)
測定波長:220.351 nm
2)表示について
テスト対象銘柄本体、外箱及び取扱説明書に日本語で記載されていた効果に関する表示と使用方法、使用上の注意事項を調べた。注意表示については、酢酸鉛含有頭髪着色用化粧品に関してのFDAの規定を参考にして調べた。
本件問合せ先
商品テスト部:042-758-3165

参考資料1
化粧品基準( 抜粋 )
(平成十二年九月二十九日)
(厚生省告示第三百三十一号)
1.総則
化粧品の原料は、それに含有される不純物等も含め、感染のおそれがある物を含む等その使用によって保健衛生上の危険を生じるおそれがある物であってはならない。

2.防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素以外の成分の配合の禁止
化粧品は、医薬品の成分(添加剤としてのみ使用される成分及び別表第2から第4に掲げる成分を除く。)、生物由来原料基準(平成15年厚生労働省告示第210号)に適合しないもの及び別表第1に掲げるものを配合してはならない。

3.防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素以外の成分の配合の制限
化粧品は、別表第2の成分名の欄に掲げる物を配合する場合は、同表の100g中の最大配合量の欄に掲げる範囲内でなければならない。

4.防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素の配合の制限
化粧品に配合される防腐剤(化粧品中の微生物の発育を抑制することを目的として化粧品に配合される物をいう。)は、別表第3に掲げる物でなければならない。
化粧品に配合される紫外線吸収剤(紫外線を特異的に吸収する物であって、紫外線による有害な影響から皮膚又は毛髪を保護することを目的として化粧品に配合されるものをいう。)は、別表第4に掲げる物でなければならない。
化粧品に配合されるタール色素については、医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令(昭和41年厚生省令第30号)第3条の規定を準用する。ただし、赤色219号及び黄色204号については、毛髪及び爪のみに使用される化粧品に限り、配合することができる。

参考資料3
(財)化学物質評価研究機構 化学物質安全性評価シート ( 抜粋 )
無機鉛は呼吸器及び消化管から吸収され、肺からの吸収率は吸入量の30-40 %、消化管からの吸収率は5-15 %とされている。
無機鉛の急性影響及び慢性影響はほぼ同様の症状が認められている。
無機鉛の吸入もしくは経口摂取により口内の収斂、渇き、消化器への影響として吐き気、嘔吐、上腹部不快感、食欲不振、腹痛、便秘などを引き起こすと報告されている。
造血機能への影響は無機鉛の代表的な作用であり、δ-アミノレブリン酸及びヘム合成酵素の阻害に起因したヘモグロビン合成阻害、赤血球寿命の短縮による貧血が認められている。
腎臓への影響として間質性腎障害(interstitial nephropathy)、尿量減少のほか、蛋白尿、血尿、尿円柱、糖尿及びアミノ酸尿などに代表されるFanconi症候群を呈する近位尿細管障害が報告されている。
無機鉛は末梢神経系に作用し、特に四肢の筋の虚弱、疼痛、痙攣が認められている。
また、成人においては非常にまれであるが、極めて高濃度(詳細不明)の暴露を受けた場合、運動失調、頭痛、知覚異常、抑うつ、昏睡などの中枢神経系への影響が認められている。しかしながら、中枢神経系への影響は、特に小児において感受性が高く、落ち着きがない、攻撃的性格、集中困難、記憶力低下などを伴う症状が米国で問題となっている。
そのほかに生殖機能への影響として、血中鉛濃度が0.528±0.21 μg/ml以上の男性では精子無力症、精子数減少及び奇形精子症がみられ、高濃度(詳細不明)の暴露を受けた女性では、不妊症、流産及び死産が多いとの報告がある。
また、ほ乳動物データによると、鉛の毒性は可溶性化合物(酢酸鉛、硝酸鉛)のほうが不溶性化合物(酸化鉛、三酸化鉛、リン酸鉛、カルボン酸鉛)より強いとされる。

(別紙)
< 要望・情報提供先一覧 >
○ 要望先
厚生労働省 医薬食品局 監視指導・麻薬対策課
○ 情報提供先
内閣府 国民生活局 消費者調整課
厚生労働省 医薬食品局 審査管理課


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